既設無塗装鋼橋に用いる摩擦接合継手

1.はじめに

無塗装鋼橋は、耐候性鋼材を利用した橋りょうであり、鋼材表面の固着した緻密なさび(以下、内層さび)で防食を図る特殊な橋りょうです(図1)。無塗装鋼橋が建設されはじめてから約40年が経過し、疲労き裂等の変状が生じ始めており、補修・補強のニーズが高まっています。
鋼橋の補修・補強に際して、新たな部材の接合や部材の交換には、施工管理のしやすさから高力ボルト摩擦接継手が良く用いられます。従来の接合方法では鋼材表面のさびを完全に除去する必要があり、多くの施工時間と費用を要します。そこで、耐候性鋼材の内層さびを積極的に活用した高力ボルト接合方法を開発しました(図2)。

2.耐候性鋼材の素地調整方法

開発した摩擦接合方法の適用には、非常に脆い浮きさびを除去する必要があります(図3)。浮きさびを除去する方法を検討した結果、現場での施工性に優れているカップブラシでも、十分に浮きさびの除去が可能であることを確認しました。

3.すべり係数および施工費用の低減

内層さびの状態や補修・補強部材の表面性状の異なる継手試験体を複数作製し、すべり試験を実施しました(図4)。試験結果から、これらの組み合わせについてすべり係数を表2のように設定しました.表2のすべり係数から接合部の必要ボルト本数や接合面積を設計することが可能となります。
本接合方法を適用により、補修・補強部材接合の施工に大掛かりな機材が不要となり、かつ、施工時間が短縮できるため、工事費を約1/3にできます。

参考文献

  1. 網谷岳夫、小林裕介、森猛:摩擦接合継手のすべり耐力と降伏耐力に対する継手形式の影響、鋼構造年次論文報告集、Vol.24、pp.5-12、2016
  2. 網谷岳夫、森猛、小林裕介:摩擦接合重ね継手のすべり耐力と降伏耐力に関する解析的検討、鋼構造論文集、No.96、pp.45-54、2017(※)
  3. 網谷岳夫、森猛、小林裕介:既設耐候性鋼橋に用いる高力ボルト摩擦接合継手のすべり耐力、構造工学シンポジウム、Vol.64A、pp.479-490、2018(※)
  4. 小林裕介、金島篤希、網谷岳夫、平野雄大、秋山慎一郎:既設耐候性鋼橋のさびを活用した高力ボルト摩擦接合方法、鉄道総研報告Vol.34、No.6、pp.35-40、2020

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