レール継目による鋼橋の疲労への影響評価

1.はじめに

鋼橋ではレール継目(図1)近傍において疲労き裂が発生しやすい傾向があります。この疲労き裂は車軸通過時におけるレール継目の衝撃によって発生する桁全体や部材局部の振動が原因と考えられています。

レール継目の衝撃によって振動しやすい部材や、その振動が疲労へ及ぼす影響度および影響範囲を解明することは検査精度の向上や予防保全対策の計画・実施のために重要になります。

効果的な予防保全対策の計画・実施に資する知見を得ることを目的に、軌道等の条件の違いによるレール継目の衝撃による鋼橋の疲労への影響を評価するとともに、その影響の大きさと範囲を算定する簡易評価手法を提案しました。

2.レール継目の形式・状態が衝撃に与える影響

モーターカーによる走行試験において補剛材上下端の応力を測定し、レール継目の形式の違いや段差または遊間といった軌道条件による違いが衝撃に与える影響を調べました。その結果、継目形式についてはかけ継ぎよりも支え継ぎ(図2)、軌道条件については遊間よりも段差(図3)が衝撃に大きく影響を与えることを明らかにしました。

3.レール継目での衝撃が鋼部材の疲労に与える影響

箱形断面の桁を対象にレール継目有り/無しをパラメータとして横リブ-縦リブの交差部で応力を計測しました。その結果、レール継目有りでは、高い振動数で横リブが大きく振動していることを明らかにしました(図4)。

高い振動数の応力が鋼橋の疲労に及ぼす影響を調べるために、累積疲労を求めました(図5)。レール継目有りでの累積疲労はレール継目無しのものと比較して30倍以上になることを明らかにしました。特に、横リブの振動の影響が支配的であり、設計で考慮していない高い振動数が疲労に影響することを明らかにしました。

4.鋼橋各部の疲労を評価する解析モデルの提案

レール継目の衝撃による部位ごと疲労の影響を評価するための簡易評価手法を開発しました。簡易評価手法は、対象橋りょうに対して1箇所で応力の測定をし、その結果から、任意点の応力や疲労損傷度等を算出するものになります(図6)。

簡易評価手法を適用することで、レール継目の衝撃による影響の大きさと範囲を算出できます(図7)。これにより、着目箇所を絞ることができ、検査の省力化につなげられます。

参考文献

  1. 井上太郎、小林裕介:レール継目での衝撃が箱断面上路鈑桁床組の疲労に及ぼす影響、構造工学論文集、Vol.67A、pp.555-565、2021(※)
  2. 金島篤希、小林裕介、井上太郎、松岡弘大:レール継目における衝撃が上路プレートガーダーの疲労に及ぼす影響、鉄道総研報告、Vol.35、No.7、2021

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