剛体電車線とカテナリ架線の移行構造

在来線の小断面トンネルでは、集電性能が劣る特殊なカテナリ架線が採用されている場合が多く、設備上の要注意箇所になっています。これを解消するための電車線方式として、設備の信頼性が高く省メンテナンス性にも優れている剛体電車線が注目されています。従来、剛体電車線区間の走行速度は90km/h以下でしたが、パンタグラフとの接触面の凹凸を低減することにより、走行可能な速度が130km/h程度に向上しました。その結果、地下鉄以外のトンネル区間にも採用されています。

剛体電車線をトンネル内の電車線として導入した場合、トンネルの出入り口でカテナリ架線との移行部分を設ける必要がありますが、現在の構造は複雑で、パンタグラフの離線や電車線部材の疲労の原因となる振動が発生し易く、また、支持物が数多く必要で建設コストの上昇を招くことなどの欠点があります。

これらを解消するため、剛体電車線とカテナリ架線の新しい移行構造を開発しました。 従来の構造は、カテナリ架線と剛体電車線を二重に設備する区間を設けたオーバラップ方式でしたが、新しい構造は、カテナリ架線と剛体電車線のトロリ線を一体化することにより簡素化し、従来30m程度必要であった移行部分の長さを10m程度に短縮しています(図1)。この構造は、カテナリ架線と剛体電車線の移行部分にトロリ線の曲がりを緩和する機構(緩和部材)を設けることにより(図2)、パンタグラフ移行時の離線やトロリ線のひずみを低く抑えることが可能で、速度130km/h程度まで安定した集電特性が得られます(図3)。