列車通過時の高架橋振動による電車線路設備の損傷低減対策

桁式高架橋などの一部において列車通過時の高架橋の桁振動により電柱が振動し、架線線条が疲労破断する事象が発生しています。この事象の発生状況は、高架橋の桁や電柱の形式・種類によって異なることから、電車線路設備損傷の発生条件を明らかにして、対策要否判定基準を明確化することが必要です。そこで、高架橋と電柱の複雑な連成問題を計算可能な連成振動解析法を開発し、解析値が営業線における実測値と概ね一致することを確認しました。また、この解析法を用いて、電柱振動が大きくなる桁径間長および高架橋と電柱の固有振動数比の条件を提示しました(図1)。提示した条件は、電車線路設備の損傷の可能性がある既設鉄道橋のスクリーニングや電車線路設備の対策工の選定に活用できます。

列車通過時の高架橋振動による電車線路設備の損傷対策として、電柱下部の剛性を高めて共振を抑制する電柱振動抑制部材を開発しました(図2)。本件は、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構と共同で開発しました。また、電柱の振動の全振幅が50 mm程度以上の場合にがいしの回転が制限されて線条に著大なひずみが発生するため、これを低減する線条支持金具構造を開発しました(図3)。

さらに、線条疲労破断防止を目的とした対策要否判定フローを提案しました(図4)。電柱上端の振動振幅により対策要否が判定できます。

参考文献

  1. 常本瑞樹,松岡弘大,後藤恵一,薄広歩,以倉慶子:列車通過時の高架橋振動による電車線路設備損傷の低減対策,鉄道総研報告,Vol.34,No.9,2020