台車着雪量推定手法

1.はじめに

積雪のある線路上を鉄道車両が走行すると、線路上の雪が舞い上げられて床下機器や台車部へ付着し、着雪として成長することがあります。これが走行中に落下すると地上設備の破損や、分岐器に挟まることで転換不良を引き起こすことがあります。着雪防止対策として、車両床下の平滑化等が実施されてきましたが、台車部は形状が複雑で有効な対策が無く、気象条件によっては着雪が著しく発達することがあります。そのため、人力による雪落とし作業が実施されている駅があります。本研究では、このような作業を効率的に実施するための台車着雪量推定手法を開発しました。

2.台車着雪量推定手法

台車着雪量推定手法は、気温、降水量、日照時間など比較的容易に入手可能な沿線の気象情報を用いて、①軌道上の雪質を推定し、②雪質と車両の床下形状や走行速度に影響を受ける雪の舞い上がり量を推定し、別途、線区ごとに分析した雪の舞い上がり量と着雪量との関係を用いて、③台車着雪量を推定するものです(図1)。

①軌道上の雪質は、気温と全天日射量(日照時間から推定可能)から積雪表層の雪密度を推定するモデルを開発しました(図2)。②雪の舞い上がり量は、排雪力測定試験装置を用いた試験結果や高架橋上での測定に基づいた雪の舞い上がり量推定モデルを開発しました(図3)。③着雪シミュレータ(図4)を開発して雪の舞い上がり量と着雪の成長との関係を求めました。本手法による着雪量推定値と実際に測定された着雪量とを比較し、着雪量の増減のタイミング、量ともにおおむね合っていることを確認しました。(図5)。

3.本手法の活用法

走行ルート沿線の気象情報を入力して着雪量を時々刻々計算することで、雪落とし作業の要否の判断や落雪が原因と考えられる障害が発生した際の列車の着雪量を推定することができます。

参考文献

  1. 鎌田慈、高橋大介、栗原靖、横倉晃、飯倉茂弘:軌道上の雪質を考慮した車両台車部の着雪量予測手法、鉄道総研報告、第29巻、第1号、pp.11-16、2015.01
  2. 鎌田慈、栗原靖、宍戸真也、高橋大介、飯倉茂弘:雪密度の変化に伴う雪の舞い上がり量の推定、寒地技術論文・報告集、Vol.28、pp.62-65、(一社)北海道開発技術センター、2012
  3. 鎌田慈、栗原靖、高橋大介、飯倉茂弘:列車走行に伴う雪の舞い上がり量の推定、寒地技術論文・報告集、Vol.27、pp.28-32、(一社)北海道開発技術センター、2012