紫外線検出式地上離線測定装置

1.はじめに

架線・パンタグラフ間に離線アークが発生すると、トロリ線やパンタグラフすり板の損耗を加速したり、 電波雑音や騒音を引き起したりするなど、様々な悪影響が懸念されます。 そこで、離線アーク測定が実施されます。測定方法は2種類に大別され、一つは車上で測定する方法、もう一つは地上で測定する方法です。両者を比較したものが表1です。

2.測定概要

図1に本測定器の測定原理図を示します。アーク光は測定器に入ると紫外線反射ミラーにより可視光線と紫外線とに分離されます。紫外線は紫外線反射ミラー2枚を経由した後にレンズで集光され,光電子増倍管に入射し,電圧変換されます。太陽光にはあまり含まれず、アーク光に多く含まれる特定の波長の紫外線のみを検出することにより、本測定器は日中でもアーク光の検出が可能です。一方,可視光線は紫外線反射ミラーを透過し,画角確認用のカメラに入射します。本測定器において検出する紫外線は、離線アークのスペクトルが持つピークの一つの波長である200~234nmを対象としています。
本測定器を用いた現地試験の様子を図2に示します。本測定器は線路から垂直方向に60m前後離れた箇所からパンタグラフの離線アークを測定することが可能であり、測定可能画角は±20°(60m離れの場合で水平方向43m)です。

3.測定結果

図3は、新幹線営業線の特定区間を通過する複数台のパンタグラフの離線アークを本測定器により測定し、地点毎のアークの発生回数を求めた結果を示したものです。この図にはトロリ線摩耗残存径測定データもあわせて示しています。また、架線の振動測定によるパンタグラフ接触力推定手法により同じ区間を通過する複数台のパンタグラフの接触力を測定し、地点毎に平均値を求めた結果も同図に示します。本図から、離線アークの発生頻度の高い箇所は平均接触力も低くなっていることが確認できます。また,本測定区間の場合は離線アークが高頻度で発生している箇所においてトロリ線の摩耗残存径が小さくなる傾向も確認できます。

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参考文献

  1. 臼田隆之、池田充:紫外線検出式の地上離線測定装置の開発、鉄道総研報告、第23巻、第2号、pp.17-20、2009.02