地上コイルの耐久性検証
1.概要
浮上式鉄道用地上コイルは、全線に敷設されるために膨大な数が必要となります。地上コイルの開発においては、コスト低減に加え、長期屋外使用を想定した耐久性検証による信頼性確保が必要です。
地上コイルの耐久性検証では、営業線レベルで30年以上の安定運用を目指し、材料並びに実機の両面から評価を進めています。
具体的には山梨実験線における取得データ(実機使用調査)を基に、モールド材の強度評価、実機の加速劣化評価について、等価的耐久性検証手法の開発に取り組んでいます。
2.推進コイル用モールド樹脂の機械強度評価
地上コイルは、鉄心の無い空芯コイルであるため、車上の超電導磁石との間に働く電磁力を保持するために、樹脂で一体モールドする必要があります。モールド樹脂には絶縁材の役割に加えて機械強度部材としての機能が要求され、特に推進コイルには絶縁性能に優れたエポキシ樹脂が用いられます。
地上コイルは変動応力と平均応力が同時に作用した状態で使用されるにも関わらず、エポキシ樹脂などの高分子材料の分野では、一般的に平均応力0における試験結果が整理されているのみであり、複合応力条件下での疲労限度線図が得られていませんでした。
そこで、推進コイル用エポキシ樹脂についてテストピース試験を重ね、図1に示す新たな疲労限度線図を作成しました。新たな疲労限度線図により、平均応力条件下での疲労強度評価がこの線図により可能となります。
3.コアシェル粒子添加によるモールド樹脂の特性改善
推進コイルのモールド樹脂の更なる信頼性の向上のためには、様々な機能が要求されますが、向上策の一つとして、従来用いられてきたモールド用エポキシ樹脂に、新たにコアシェル粒子を添加することで、靭性の向上に成功しました。
コアシェル粒子とは、図2のように、中心にコア相があり、その周りにシェル相が取り囲んでいる微粒子です。コア相を低弾性のアクリルゴム、シェル相をエポキシ樹脂と密着性のよい材料としたコアシェル粒子用いて樹脂の供試体を作成しました。
供試体を用いた耐久性評価試験を実施した結果、機械特性試験の耐衝撃強さ試験および熱特性試験の耐熱衝撃試験において、従来の樹脂より優れた特性を示しました。
本研究の一部は、国土交通省の交通運輸技術開発推進制度の助成を受けて実施しました。
関連ページ
参考文献
- 高橋紀之,鈴木正夫,饗庭雅之:推進浮上案内兼用コイル保護層の耐衝撃強度評価,鉄道総研報告,Vol. 24, No. 1, pp. 11-16, 2010
- Suzuki, H., Suzuki, M. and Aihara, N., " Durability Evaluation Tests of Mold Resin for Ground Coil", Quarterly Report of RTRI, Vol. 49, No. 2, pp. 119-126, 2008(※)
- Tanaka, M., Aiba, M. and Suzuki, M., "Development of Electromagnetic Vibration Test Apparatus for Ground Coils Applied to Maglev System", Quarterly Report of RTRI, Vol. 48, No. 2, pp. 110-114, 2007(※)
- 池田遼平,鈴木正夫:コアシェル粒子添加による推進系地上コイル用モールド樹脂の特性改善,鉄道総研報告,Vol. 28, No. 9, pp. 17-22, 2014
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