3. 大規模地震時の基盤地震動の高精度推定手法

 大規模地震の地表観測記録(図1(a))は、基盤から地表に伝わる間に表層地盤の非線形化の影響を強く受けます。そのため、観測記録は地震計が設置された地点の局所的な揺れを表すものに過ぎず、広域の地震動を評価するためには、表層地盤の影響を取り除いた基盤位置の地震動(図1(b))を求め、これに各地の表層地盤の影響を付加することになります。
 この表層地盤の非線形挙動は時々刻々複雑に変化するため、従来法ではこの影響を適切に除去して高精度の基盤地震動を推定することは困難でした。

この課題を解決するために、基盤地震動推定の収束計算における解の探索方法を工夫することで、地表観測記録から基盤地震動を高精度に推定する手法を提案しました。
 提案手法では、計算の初期段階では解析モデルの自由度を小さくした簡易モデルを用い、ある程度収束した後に自由度の大きな詳細解析モデルを用いることで、計算の高速化を実現しています。
 提案手法で基盤地震動を推定した結果(図2)、従来法では推定が困難であった主要動の大振幅を良好に再現できています。
 また、従来法と比較して、推定誤差を1/6としつつ、計算時間を1/30とすることが可能です(図3)。

 提案手法により、大規模地震に伴う地震計設置個所以外での地表面地震動(図1(c))の推定精度が向上し、構造物、車両、電化柱などの被害発生原因のより詳細な解明が可能となります。
 また、鉄道地震被害推定情報配信システム(DISER)における揺れの空間分布の精度向上にも活用可能であり、地震後の点検箇所の効率的な抽出や、復旧時間の短縮などに活用できます。