支承部の設計法の開発

1.はじめに

コンクリート橋りょうの支承部には、落橋を防止するため、ストッパーが埋め込まれています.近年の地震において、ストッパー埋込み部に損傷が多数生じました(図1)。このうちコンクリートの浮きを伴う損傷が桁端の遊間側に生じた場合の復旧(動画1)は、同程度の損傷が桁座に生じた場合の復旧(動画2)と比べて困難でした。この復旧が困難な損傷を抑制することが復旧作業の工期および工費の削減に有効であり、そのためには、ストッパー埋込み部の耐力を精度よく算定し、耐力向上が可能な構造にすることが求められます。

2.鉄筋の配置の影響を評価可能なストッパー埋込み部の耐力算定法の提案

鉄筋の量を増やすことなく耐力を向上させる鉄筋の形状の影響を評価可能な耐力算定法を提案しました(図2)。従来の算定法では鉄筋の形状に関わらず同一の耐力と評価していましたが、載荷実験やFEM解析により鉄筋の形状に応じて (ⅰ)~(ⅲ)の3つの破壊モードとなり耐力が異なることを明らかにし、その影響を取り込んで算定法を構築しました。これにより、鉄筋の形状の変更によって増加する耐力を評価できます。

3.提案した設計法による復旧が困難な箇所の損傷の抑制効果

従来法で設計した場合には復旧が困難な桁端で破壊が生じることがありますが、提案法で設計した場合には、従来と比べて同等以上の耐力が確保でき、復旧が困難な箇所での損傷は軽微な状態に抑制できることを確認しました(図3)。復旧が困難な損傷箇所の復旧作業で必要となる重機を用いたはつりや足場架設をなくすことにより、工事費を8割削減できます。

本研究の一部は、国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施しました。

動画1 地震で生じた桁端の遊間側の復旧例
動画2 地震で生じた桁座損傷の復旧例

※上記の動画は 外部の動画サイトの埋め込みリンク です。

参考文献

  1. 岡本圭太、轟俊太朗、笠倉亮太、石井秀和:ストッパー周辺のコンクリートのせん断補強に関する実験的検討、コンクリート工学年次論文集、Vol.39、 No.2、 pp.967-972、 2017
  2. 笠倉亮太、轟俊太朗、進藤良則、下津達也:鋼角ストッパー桁端埋込み部のせん断破壊性状に関する一考察、コンクリート工学年次論文集、Vol39、 No.2、 pp.679-684、 2017
  3. 平野悠輔、轟俊太朗、田所敏弥:実橋モデルを用いた鋼角ストッパー埋込み部の損傷に関する検討、コンクリート工学年次論文集、Vol.43、No.2、pp.679-684 、2021
  4. 堂内悠吾、轟俊太朗、田畑勝幸、田所敏弥:地震時に鋼棒ストッパーの降伏が橋脚の応答に与える影響、コンクリート工学年次論文集、Vol.43、No.2 、 pp.577-582、 2021
  5. 田畑勝幸、轟俊太朗、堂内悠吾、田所敏弥:縁端距離と補強鉄筋量が鋼棒ストッパー埋込み部の 損傷メカニズムに及ぼす影響、構造工学論文集、Vol.68A、 pp.702-710 、2022
  6. 田畑勝幸、轟俊太朗、堂内悠吾、田所敏弥:地震時の鋼棒ストッパー埋込み部の破壊が鉄道橋りょう全体系の応答に与える影響、コンクリート工学年次論文集、Vol.44 、No.2 、pp.967-972 、 2022
  7. 森勇樹、轟俊太朗、田畑勝幸、田所敏弥:補強鉄筋の配置の変更による鉄道橋りょうの鋼角ストッパー埋込み部の損傷の抑制に関する一考察、コンクリート工学年次論文集、Vol.44 、No.2 、 pp.67-72 、2022
  8. 轟俊太朗、田所敏弥、渡邊忠朋、岡本大:鉄道橋りょうにおける鋼角ストッパー埋込み部の鉄筋の配置に応じた破壊のメカニズム、土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造)、Vol.78、 No.3、 pp.197-209、 2022

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