プレキャスト構造の特徴を考慮した設計法の開発
1.はじめに
建設産業の緊迫の課題である生産性向上の観点から、プレキャスト構造の適用が検討されています。また、適用にあたって、低コスト化や施工性の向上が望まれています。本研究では、鉄道ラーメン高架橋を対象に、プレキャスト構造の特徴を考慮した設計法を開発しました。
2.接合時期を考慮した収縮量の提案
ラーメン高架橋は不静定構造のため、収縮・クリープの経時的変化によって部材に断面力が発生します。一般に、プレキャスト部材は工場で製作後、ある程度の期間を経て現地で接合がなされるため、場所打ちコンクリートと比べて接合後の収縮量は小さくなります。そこで、非線形有限要素解析(FEM)に基づき、骨組解析で用いることのできる不静定力の算定に用いる収縮量を提案しました(図1、図2)。これにより、ひび割れの照査で部材諸元が決定される縦梁で、断面縮小や長スパン化が可能となります。
3.接合面に対するせん断補強方法
プレキャスト構造では、部材間をつなぐ接合面が存在し、部材のせん断耐力に影響を及ぼす可能性があります。本研究では、実験およびFEMにより、接合面がせん断耐力に及ぼす影響を明らかにするとともに、FEMによる評価方法や、せん断耐力の低下を抑制する具体的な補強方法を開発しました(図3)。
4.縦梁に対する接合構造の開発
縦梁に対する新たな接合構造を開発しました(動画1)。本構造は、支保工を省略し、接合部のみを場所打ちとすることで、注入などの特殊な作業を不要としました。また、接合部とプレキャスト部材(縦梁)の断面諸元を変化させることが可能であり、低コスト化や揚重・運搬に関する施工性が向上します。
2~4章を適用した試設計により、従来のプレキャスト構造と比較して、工期およびコストが5~10%程度減少できることが明らかとなっています。
本研究の一部は、国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施しました。
※上記の動画は 外部の動画サイトの埋め込みリンク です。
参考文献
- 堂内悠吾、中田裕喜、渡辺健、中村麻美、石田哲也:部材の接合時期を考慮したRCラーメン高架橋の不静定力の評価、コンクリート構造物の補修、補強、アップグレード論文報告集、第21巻、pp.456-461、2021.10
- 西尾悠吾、中田裕喜、渡辺健、田所敏弥:接合面およびせん断補強鉄筋量が単純支持RCはりのせん断耐荷機構に及ぼす影響、コンクリート工学年次論文集、Vol.43、No.2、pp.289-294、2021
- 本田健二朗、山上晶子、中田裕喜、渡辺健:接合面を有する両端固定支持RCディープビームにおける接合面周辺のせん断補強鉄筋の効果、コンクリート工学年次論文報告集、Vol.44、No.2、2022
- 大野又稔、中田裕喜、渡辺健、田所敏弥:プレキャストコンクリート構造のせん断伝達メカニズムとスターラップによる補強効果の解析的検討、コンクリート工学年次論文報告集、Vol.44、No.2、2022
- 山上晶子、中田裕喜、渡辺健、田所敏弥、土井至朗 、西村知晃、 安保知紀:接合面を有する両端固定支持RC はりのシアキーによるせん断補強効果の実験的検証、令和4年度土木学会第77回年次学術講演会、2022
- 大野又稔、中田裕喜、渡辺健、田所敏弥:接合部のシアキーとスターラップによる棒部材の補強効果に関する解析的検討、令和4年度土木学会第77回年次学術講演会、2022
- 本田健二朗、大野又稔、中田裕喜、渡辺健、田所敏弥、西村知晃 、安保知紀:ラーメン高架橋における半円形フック同士の応力伝達を用いた接合構造の成立性に関する実験的検討、令和4年度土木学会第77回年次学術講演会、2022
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