れんがトンネルの長寿命化に関する研究

れんが積みトンネルにおける進行性を有する劣化現象として、煤煙による目地やせ、凍害によるれんが母材の剥落があります。これらの劣化に効果的に対応するべく、鉄道総研では安全かつ経済的な施工法や将来予測手法を検討しています。

1.エポキシ樹脂目地充填工法

目地やせの補修としては、セメント材料を目地に充填するポインチングが従来から適用されていますが、夜間高所上向きでの作業となり、施工速度が非常に緩慢であることが課題となっていました(図1)。
そこで、鉄道総研ではエポキシ樹脂を専用のガンを用いて充填する工法を開発しました(図2)。エポキシ樹脂材料としては、上向き施工でも液垂れせずに施工性が良く、あと施工アンカー固定等で長期にわたる施工実績により材料としての安定性が十分に確認されている、比較的高粘度のエポキシ材料を選定しました。耐荷力については、押し抜き試験を実施し、れんがの抜け落ちに対して十分な耐荷力を有することを確認しています。
さらに、エポキシ樹脂目地充填工法の試験施工を2つの廃線れんがトンネルのアーチ部、および1つの活線れんがトンネルの側壁で実施し、従来工法(ポインチング工法)と比較して工費と施工速度の面で優れていることを確認しました(図3)。

2.凍害予測モデル

凍害を受けるトンネルでは、近年劣化(剥落)が収まってきているトンネルが見られる一方、逆に劣化が進行してきていると考えられるトンネルも存在します。これは、凍害が、気温が低いほど発生するものではなく、凍結融解を繰り返す回数と関係があるためと考えられます。
そこで、気象観測所のデータおよび温暖化予測の気候モデル相互プロジェクト(CMIP6)のデータをもとに、トンネル位置の1時間毎の温度の時系列データを作成し、そのトンネルの将来の凍害を予測するモデルを作成しました(図4)。
凍害を受けるれんがトンネル10トンネルを対象に、坑口位置の覆工の深度5cmにおける凍結融解回数の推移を求めたところ、温暖化により将来的に凍結融解回数が減るトンネル(Aトンネル)がある一方で、真冬日が長期間継続するような寒冷地のトンネル(Bトンネル)では凍結融解回数が増えることが確認できました(図5)。