導電性塗料を用いた鋼部材の疲労き裂検知手法の開発

1.はじめに

レール部材や鋼橋等に発生する疲労き裂は、定期検査時に目視で発見するのが一般的です。しかしながら、その検査にが概して労力を要する上にき裂の発見には熟練した技術が必要であるため、省力化やコスト削減の観点から、目視に頼らずにき裂の発生および進展を検知できる手法が望まれています。そこで、導電性塗料に着目し、様々な鋼部材に適用可能なき裂検知システムを開発しました。

2.き裂検知システムの概要

き裂検知システムは、き裂検知部、測定部、配線部の3つから構成されます。き裂検知部とは、き裂の発生が懸念される箇所に対してき裂検知用の導電性塗膜を配置した部位を指します。測定部とは、導電性塗膜の電気特性を測定する端子台もしくは測定機器を配置した部位を指します。配線部は、これらの部位を接続するための配線用の導電性塗膜を配置した部位となります。図1に鋼橋へシステムを適用した場合のイメージを示します。検査者が接近しやすい箇所に測定部を配置することにより、き裂の発生・進展の状況を簡便に把握することが可能になります。

3.導電性塗膜によるき裂検知手法の概要

導電性塗料は有機樹脂塗料に導電性顔料を配合したものです。き裂検知用の導電性塗料にはカーボン系の導電性顔料を使用し、配線用の導電性塗料には金属系の導電性顔料を使用しています。導電性塗膜は単独で使用せず、防食用の複合塗膜に組み込みます。これにより、長期間の耐久性が期待できます。き裂の検知イメージを図2に示します。鋼部材へのき裂の発生・進展に伴って導電性塗膜も破壊されるため、塗膜の電気抵抗が増加します。この電気抵抗の変化を監視することにより、き裂の検知が可能となります。

参考文献

  1. 坂本達朗:導電性塗料を用いて鋼構造物のき裂を検知する、RRR、Vol.70、No.5、pp.12-15、2013.05
  2. 坂本達朗、枡田吉弘、細田充、吉野哲也:導電性塗料を用いたノーズ可動クロッシングのき裂検知の基礎検討、鉄道総研報告、第26巻、第12号、pp.23-28、2012.12