積層型吸音材による高架橋防音壁の性能向上
鉄道高架橋では、防音壁による騒音低減性能向上のため、軌道側壁面に吸音板が設置されています。近年の吸音板には、吸音材としてポリエステル素材の繊維材料(ポリエステル繊維)が使用されています。繊維材料の吸音性能は厚さや嵩密度、素材の繊維径等によって変化します。そのため、吸音材を活用して防音壁の騒音低減性能を向上させるには、各種繊維材料の特性と吸音性能の関係性に着目し、特に1kHz以上で卓越する列車走行音の周波数特性に適した吸音性能を実現することが重要です。
そこで、特性の異なる2種類の繊維材料を積層することで、800Hz以上の周波数帯域での垂直入射吸音率が0.9を上回るなど列車走行音に適した吸音性能が実現できることを見出しました(図1)。さらに、長期間の屋外使用に耐え得る繊維材料を用いて吸音材構造(積層型吸音材)を作製しました(図2)。
現在、高架橋では従来からのコンクリート製防音壁に代わる新たな防音壁構造が求められつつあります。そのような防音壁には、騒音低減効果に関わる基本的な音響性能が高いことに加えて、施工性が高く維持管理が容易であることが望ましいと考えられます。こうした要求に応えるため、積層型吸音材を適用した新たな防音壁構造として、吸音・遮音一体型防音壁(吸遮音壁)の開発を進めています(図3)。
積層型吸音材を適用した吸音・遮音一体型防音壁の開発は、日鉄建材株式会社との共同研究により実施しています。