柔軟で成型性の高い圧電材料(圧電ゴム)
1.はじめに
圧電材料には、振動などの機械エネルギーと電圧や電流の電気エネルギーとを相互に変換できる性能があり、このような性能を利用して、センサ等として一般的に利用されています。一方、一般的な圧電材料である圧電セラミックスは、硬く脆いため、使用できる箇所が限られるなどの課題があります。
そこで、当研究室では、ゴム材中に圧電セラミックス粒子を混合した、圧電ゴムの研究に取り組んできました。圧電ゴムは、ゴム材の特徴である、柔軟性や成型性の高さを活かして、幅広い箇所でセンサ等に使用できる圧電材料として期待されます。
ここでは、鉄道分野における圧電ゴムのセンサとしての適用可能性について検証した結果を示します。
2.圧電ゴム
圧電ゴムは、図1に示すように、柔軟で割れ難い材料です。また、幅広い面積や複雑な形状に成型できる利点もあります。また、荷重を加えると、加えた荷重に応じて電圧や電荷が発生します。
3.圧電ゴムのセンサとしての鉄道分野への応用
圧電ゴムの鉄道分野におけるセンサとしての適用可能性を検証しました。検証した事例について説明します。
圧電ゴムを車軸軸受における損傷検知センサとして適用できるか検証しました。圧電ゴムは、車軸軸受の上に設置されている防振ゴムの内部に設置しました。図2は、軸受内部に人工的な傷を付与させた軸受および正常な軸受に対して、回転試験を実施した結果です。
車軸軸受内部に人工的な傷を付与して軸受を回転させた場合、正常な軸受の回転の際には、発生しない周波数に傷に起因する電圧が発生していることがわかります。圧電ゴムを用いることによって、直接測定した電圧値から損傷の有無を判定できるため、省力化した異常検知センサとなることが期待されます。
4.圧電ゴムの圧電性能向上
通常の作製方法で作製した圧電ゴムは、圧電性能が低いため、電気信号を増幅するアンプを介してセンサとして使用する必要があります。しかし、圧電性能が向上すれば、圧電ゴムから発生する電気信号を直接利用できるセンサとなることが期待されます。
そこで、圧電性能を向上させるため、ゴム材中で圧電セラミックス粒子が配向した粒子配向型圧電ゴムを作製しました。
図4は圧電セラミックス粒子の配向状況です。厚さ方向に粒子が連なって配向している様子がわかります。粒子の配向によって性能向上させた圧電ゴムを積層し、振動を加えることによって、LEDを点滅させることができます。(動画1)
※上記の動画は外部の動画サイトの埋め込みリンクです。
関連ページ
参考文献
- Shogo Mamada, Naoyuki Yaguchi, Masanori Hansaka, Masafumi Yamato, Hirohisa Yoshida:Matrix Influence on the Piezoelectric Propperties of Piezoelectric Ceramic/Polymer Compposite Exhibiting Particle Alignment, Journal of Applied Polymer Science, Vol.132, Issue.15, app.41817, 2015
- Shogo Mamada, Naoyuki Yaguchi, Masanori Hansaka, Masafumi Yamato, Hirohisa Yoshida:Performance impprovement of ppiezoelectric-rubber by pparticle formation of linear aggregates, Journal of Applied Polymer Science, Vol.131, Issue.3, app.39862, 2014
- 間々田祥吾、矢口直幸、半坂征則、鈴木実、佐藤大悟:圧電ゴムを鉄道に応用する、RRR、Vol.68、No.11、pp.14-17、2011.11
- 間々田祥吾、矢口直幸、半坂征則、鈴木実、佐藤大悟:粒子配向による圧電ゴムの特性向上、鉄道総研報告、第25巻、第10号、pp.39-44、2011.10
- 間々田祥吾、矢口直幸、半坂征則、鈴木実:圧電ゴムの特性評価方法および材料構成の検討、高分子論文集、Vol.65、No.9、pp.579-586、2008