地震時の脱線を防止する台車部品

1.地震時の走行安全性を改善する台車諸元

 巨大地震から鉄道システムを守るため、各方面から様々な検討が行われています。このうち、車両側からの取り組みとして、ばねやダンパなどの台車部品の特性をはじめとした台車諸元と、地震時の脱線に対する安全性との関係について、車両挙動解析による検討を行ないました。その結果、左右動ダンパの減衰特性など、主に車体支持装置まわりの台車諸元を変更することで、地震時の脱線に対する安全性を改善できることがわかりました(図1)。

2.地震対策ダンパ

 地震時の走行安全性を改善する台車諸元についての検討結果をもとに、地震時脱線対策左右動ダンパ(「地震対策ダンパ」)を開発しました(図2、図3)。
 地震対策ダンパでは、平常時は現行の左右動ダンパと同じ減衰力を、地震時にはより大きな減衰力を発生するように減衰力特性を設定しています(図4)。このことにより、平常時は現行の左右動ダンパと同様に乗り心地向上のために機能し、地震時には大きな減衰力を発生することで地震動により生じた車体と台車間の揺れを抑制し脱線を防止します。また、特別な制御装置などを必要としないため、台車強度および他部品に対する寸法上の問題がないことが確認できれば、現行の左右動ダンパと置き換えることができます。
 地震対策ダンパの脱線防止性能を調査するため、大型振動試験装置による実台車加振試験を行いました(図5)。その結果、現行のダンパを装備した場合に比べ、地震対策ダンパを装備した場合には、安全上の目安とした輪重がゼロとなる、すなわち車輪がレールから飛び上がる状態に大きな加振振幅まで至らないことを確認しました(図6)。
 また、平常時の走行性能を確認するため、地震対策ダンパを新幹線車両に実装し、最高速度320km/hまでの走行試験を行いました。その結果、フルアクティブ振動制御装置に対し正常に動作し、現行の左右動ダンパと変わらない乗り心地を実現できることを確認しました。

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参考文献

  1. 宮本岳史、石田弘明:台車改良による地震時走行安全性向上に関する研究、鉄道総研報告、第21巻、第12号、pp.35-40、2007.12
  2. 鈴木貢、飯田浩平、宮本岳史、中嶋大智、遠竹隆行、梶谷泰史:鉄道車両の地震対策用左右動ダンパの開発、鉄道総研報告、第25巻、第6号、pp.17-22、2011.06
  3. 宮本岳史:車両の地震対策、R&m、Vol.17、No.9、pp.61-64、2009.09