脱線後の編成車両の挙動に着目したシミュレーション

1.はじめに

編成内の前方車両が脱線した際に、脱線した車両に大きな走行抵抗が作用すると、編成の後方車両が左右方向に偏り、車両が軌道から大きく逸脱する可能性があります。そこで、脱線後の編成車両の挙動を把握するために、車両がまくらぎ上を高速で走行する際の走行抵抗を求める模型試験、台車がバラスト上を走るときの走行抵抗を求める実台車試験をそれぞれ実施しました。これらの実験で得られた知見をもとに脱線後の車両挙動解析が可能な3次元車両運動シミュレーションプログラムを開発し、脱線後の編成車両の運動を解析しました。

2.シミュレーション結果例

開発したシミュレーションによって脱線が生じた後の5両編成の編成車両の挙動について数値計算を実施し、特にブレーキ力の与え方を編成車両間で変化させた場合の脱線後の挙動の違いを調べました。図1に編成中央にあたる3両目の車両挙動の解析結果例を示します。脱線した車両より後部の車両にブレーキ力を集中的に与えることで、概ね70km/h程度までは脱線した車両が横(左右)方向に偏って走ることを防ぐ可能性があることがわかりました。動画1に脱線した車両の挙動を示します。

動画1 脱線した編成車両の挙動

※上記の動画は外部の動画サイトの埋め込みリンクです。

参考文献

  1. 葛田理仁、宮本岳史、植木健司:脱線後の編成車両の挙動に着目したシミュレーション、鉄道総研報告、第26巻、第8号、pp.17-22、2012.08