曲線部における車輪/レール潤滑手法

1.はじめに

車輪/レール潤滑システムは、外軌潤滑(車輪フランジ/レールゲージコーナ)と内軌潤滑(車輪踏面/レール頭頂面)とに分類できます。外軌潤滑は、車輪フランジとレールゲージコーナの接触点の摩擦係数を低減して摩耗やフランジ音を抑制することを目的としており、潤滑剤を精度よく車輪フランジ/レールゲージコーナに供給できるのであれば摩擦係数がより小さいことが望まれます。内軌潤滑は、車両が半径の小さい曲線を通過するときに発生する横圧を減らし、レール波状摩耗の発生防止やきしり音の抑制に効果があります。ただし、レール頭頂面/車輪踏面間の潤滑による制動距離の延伸、空転および滑走を抑えるために、種々の潤滑剤の中でも、巨視滑り領域においてはすべり率の増加に対して接線力係数が低下しないものの使用が望まれます。

2.基本特性および曲線通過シミュレーション結果

本研究では、国内で使用されている代表的な潤滑剤ならびに鉄道総研で開発した試作品の基本特性(トラクション挙動等)を調べ、内軌潤滑または外軌潤滑に適する潤滑剤を検討しました(図1)。さらに、車両走行シミュレーション手法を用いて潤滑パターン(外軌潤滑、内軌潤滑、内・外軌潤滑)による横圧低減効果を評価しました(図2)。図1から、固体潤滑剤1、2と新規試作品はすべり率の増大に伴ってトラクション係数が大きくなり、空転・滑走の抑制効果が期待できるため、内軌潤滑に適していると考えられます。 図2から、無潤滑に比べて、内軌潤滑は内軌と外軌両側の横圧を著しく低減する一方、曲線半径が大きくなるに従って内軌潤滑による外軌側横圧の低減効果が小さくなるため、列車速度、曲線諸元や発生している現象に応じて潤滑手法を選択する必要があります。

参考文献

  1. 陳樺、深貝晋也、曽根康友、土井久代、伴巧、名村明:曲線部における車輪/レール潤滑方法の評価、鉄道総研報告、第26巻、第8号、pp.29-34、2012.08