車輪/レール接触による摩耗・損傷メカニズム
1.はじめに
列車がレール上を走行する際、車輪/レール接触部には高い接触面圧やすべりが生じます。その結果、車輪/レール間においては摩耗進展が生じるほか、レール頭頂面にはシェリングやきしみ割れ、ゲージコーナき裂といった損傷事例が発生することがあります。これらの現象に対して、発生メカニズムを明らかにし、その発生を予測することや対策法を構築することは、低コスト化に貢献するだけでなく、安全・安定輸送の観点から重要となります。
2.摩耗・損傷現象の再現試験
車輪/レール接触に起因する摩耗・損傷メカニズムの解明ならびに対策法を構築するため、車輪・レール高速接触疲労試験装置(図1)により車輪/レール接触を模擬した転動疲労試験を実施しました。そして摩耗進展や疲労き裂を再現するとともに、予測式の構築や対策法を提案しました。
3.摩耗形状予測モデル
車輪/レールにおける摩耗進展は、損傷の発生に比べると急激に進展する恐れはないものの、車輪の転削やレール交換の基準となっているほか、レール頭頂面における損傷の発生と密接な関係があります。一方で、車輪/レール接触状態は走行条件や軌道諸元によって大きく変化します。そこで、車輪・レール高速接触疲労試験装置(図1)による室内摩耗試験結果に基づき、マルチボディダイナミクスSimpackと連成した、摩耗形状予測モデルを構築しました(図2)。
この摩耗形状予測モデルより、軌道モデルの任意箇所における摩耗量(図3)や摩耗形状(図4)を予測することができます。