縦ひび割れに着目したPCまくらぎの健全度評価システム
PCまくらぎに生じるひび割れ
プレストレストコンクリート製のまくらぎ(以下,PCまくらぎ)は、鉄道の高速化や安全性の向上に欠かせない、重要な軌道の構成要素です。近年、新幹線用経年PCまくらぎの一部に、まくらぎ長手方向のひび割れ(縦ひび割れ)の発生が確認されております(図1)。現状では、PCまくらぎの維持管理は主に目視による定積的な判断により行われており、また現場には膨大な数のPCまくらぎが敷設されていることから、縦ひび割れが生じたPCまくらぎについても効率的な検査手法やツールが求められていました。
縦ひび割れの生じたPCまくらぎの実態解明
縦ひび割れの生じたPCまくらぎの維持管理効率化のためには、その実態を解明し、定量的な健全度評価指標を提案することが不可欠です。そこでまず、現場に敷設されているPCまくらぎ(経年の異なるJIS 3Hまくらぎ合計71本)を収集し、収集したPCまくらぎのひび割れ発生状態と耐力の実態調査を実施しました。その結果、同じ経年(経年48年)のPCまくらぎでは、PCまくらぎ上面のひび割れ長さが長くなるほど、埋込栓引抜耐力が低下する傾向があることが確認されました(図2)。この傾向を用いることで、上面ひび割れ長さから、埋込栓の耐力に関連付けた定量的な健全度評価が行える可能性があります。
深層学習を活用したひび割れ検出・長さ測定
実態調査より、PCまくらぎ上面のひび割れ長さから耐力と関連付けられた健全度評価の可能性が示されました。一方で、実際の現場において、膨大な数が敷設されているPCまくらぎの個々のひび割れ長さを測定することは現実的ではありません。そこで、深層学習の1種であるセマンティックセグメンテーションと呼ばれる手法を活用して、PCまくらぎの上面を撮影した画像から、ひび割れを抽出し、その長さを推定する手法を開発いたしました(図3)。
縦ひび割れが生じたPCまくらぎの健全度評価システム
これまでの研究成果を統合し、縦ひび割れが生じたPCまくらぎの健全度評価システム(図4)を開発いたしました。本システムを用いることで、PCまくらぎの耐力と関連付けられた定量的な健全度評価を効率的に行うことが可能となります。