湿潤条件下の車輪・レール粘着メカニズム
1.はじめに
降雨や降雪時に車輪とレールの間に水が介在することにより粘着力が低下し、力行時の空転現象やブレーキ時の滑走現象が発生する事例がよく見受けられます。その際、空転による列車の遅延やダイヤの乱れ、滑走によるブレーキ距離の延伸などだけではなく、レール頭頂面の空転傷や車輪踏面の滑走傷が形成されることによって、車両走行時の騒音や振動が大きくなったり、乗り心地が悪化する恐れもあります。空転・滑走を避けるため、湿潤条件下の粘着メカニズムを解明し、有効な粘着対策を講じることが重要となります。
2.表面粗さと温度の影響
実験には2円筒転がり試験機を用い、試験輪(車輪とレール輪)の表面粗さと試験輪・散水の温度とを複数通りに組み合わせ、粘着係数(微小すべり域内の最大トラクション係数)を得ました。図1の合成粗さは車輪とレール輪のそれぞれの試験前の自乗平均粗さの自乗平均値です。実験で得られた粘着係数は、合成粗さが小さいほど小さく、合成粗さが1から3μmで極大となり、また試験輪の温度が大きいほど大きくなりました。