加速度モニタリングによる既設橋りょうの構造性能評価

新幹線橋りょうでは、列車通過に伴う共振による顕著な振動が観測されているものがあります。一般的に、既設橋りょうの維持管理では目視による検査のみが行われています。しかし、列車走行性、疲労等の構造性能を精度良く評価するには、定期的にたわみや鉄筋の応力といった定量的なデータを取得する必要があります。一方、その為の労力や経費の増大が課題となっています。

そこで、加速度波形のうち低周波成分を振動理論による波形に置換してたわみ波形へ積分するアルゴリズムを開発しました。さらに、コンクリートのひび割れによる鉄筋の応力増加を考慮すること等により、詳細な断面計算をすることなくたわみ波形から鉄筋の応力波形を推定するアルゴリズムを開発しました(図1)。
これにより、橋りょうの加速度の測定波形から、たわみによる乗り心地等の列車走行性や、鉄筋応力による疲労等を評価できるようになりました。本手法は、標準的な既設コンクリート桁の場合、1秒以下の高速処理により、10%以下の推定誤差でたわみや応力を推定できます。本手法の妥当性は、数値実験や実橋りょうの応力測定等と比較することにより検証しています。

小型で常設可能な加速度モニタリングに本アルゴリズムを適用することにより、例えば列車通過時に共振するような橋りょうに対して、多大な労力をかけずに構造性能の定量的な評価や補修・補強の要否判断を実施できます(図2)。

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参考文献

  1. 徳永宗正,池田学,吉田幸司:実測加速度積分による列車通過時の単純支持橋りょうの変位応答波形の復元,土木学会論文集A1,Vol. 78,No. 1,pp. 47-60, 2022

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