10. 加速度モニタリングによる既設橋りょうの構造性能評価

 新幹線橋りょうでは、列車通過に伴う共振による顕著な振動が観測されているものがあります。
 一方、既設橋りょうの維持管理では一般に目視による検査のみが行われる一方で、列車走行性、疲労などの構造性能を精度良く評価するためには、定期的なたわみや鉄筋の応力といった定量的なデータが必要であり、労力・経費増大が課題となっていました。

 そこで、橋りょうに設置した加速度センサの記録から、列車通過時のたわみや鉄筋応力を高精度に推定する手法を開発しました。
 加速度センサは低周波領域でノイズにより精度が低下します。そこで、加速度波形のうち低周波成分を振動理論による波形に置換してたわみ波形へ積分するアルゴリズム、さらに、コンクリートのひび割れによる鉄筋の応力増加を考慮するなどにより、たわみ波形から鉄筋の応力波形を詳細な断面計算をせずに推定するアルゴリズムを開発しました(図1)。
 これにより、橋りょうの加速度の測定波形から、たわみによる乗り心地などの列車走行性や、鉄筋応力による疲労などを評価できるようになりました。本手法は、標準的な既設コンクリート桁の場合、1秒以下の高速処理により、10%以下の推定誤差でたわみや応力を推定できます。
 本手法の妥当性は、数値実験や実橋りょうの応力測定などと比較することにより検証しています。

 小型で常設可能な加速度モニタリングに本アルゴリズムを適用することにより、例えば列車通過時に共振するような橋りょうに対して、多大な労力をかけずに構造性能の定量的な評価や補修・補強の要否判断を実施できます(図2)。