盛土越流・洗掘解析手法の開発
1.はじめに
2011年東北地方太平洋沖地震では、津波により盛土に洗掘被害が発生しました。将来予想される南海トラフ地震などでも津波により盛土に越流洗掘が発生することが考えられます。
また、近年の豪雨災害の激甚化・頻発化により、集水地形周辺の盛土において、排水設備の排水能力を超えた雨水が盛土法面を流下し、法面侵食や支持地盤を洗掘する被害が発生しています。
そこで、本研究では、これらの被害の予測や対策に向けて、盛土に対して越流による洗掘解析を実施できる解析手法を開発しました。
2.本解析手法の特長
図1に解析手法のイメージを示します。洗掘解析においては、盛土周辺を流れる水の流れと、盛土および支持地盤を構成する地盤の変形を解析可能な手法が必要となります。
本解析手法では、流体解析にMPS法、地盤解析にMPMを採用し、流体解析から地盤解析に対して、地盤と水の間の相互作用力を受け渡すことによって、洗掘による地盤の変形量を算出します(参考文献1)。
3.計算結果
ビデオ1に津波の越流による盛土の洗掘現象の実験と解析の結果比較を示します。比較の結果、開発した洗掘解析手法により、概ね洗掘形状を再現できることを確認しました。
洗掘解析の結果より、水の流速と地盤のひずみ分布を可視化することができるようになり、洗掘時の流速と地盤内のひずみが集中する箇所を把握できるようになりました。
この例では、盛土の部分は、津波に強い補強土盛土(参考文献2)としてモデル化しており、変形しないものとして解析を行っております。実際の盛土では、侵食等の変形が発生すると考えられ、このような変形も本解析手法で取り扱うことは可能と考えられますが、これらの検証は今後の課題です。
本研究の一部は、独立行政法人日本学術振興会の科学研究費助成事業の助成を受けて実施しました。
※上記の動画は外部の動画サイトの埋め込みリンクです。
参考文献
- Keita ABE, Kohei MUROTANI, Kenji WATANABE:DEVELOPMENT OF MPM-MPS COUPLING METHOD AND NUMERICAL ANALYSIS OF SCOURING OF EMBANKMENT CAUSED BY OVERFLOW、土木学会論文集A2(応用力学)、76 巻、2 号、pp. I_205-I_216、2020、https://doi.org/10.2208/jscejam.76.2_I_205 (※)
- Watanabe K., Nakajima S., Fujii K., Matsuura K., Kudo A., Nonaka T., Aoyagi Y.: Development of geosynthetic-reinforced soil embankment resistant to severe earthquakes and prolonged overflows due to tsunamis, Soils and Founda-tions, 2020, https://doi.org/10.1016/j.sandf.2020.08.006 (※)
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