車両運動解析に適用する雨天走行時を模擬した実用的な車輪/レール接線力モデル

1.はじめに

マルチボディダイナミクス理論に基づく市販ソフトウェア(図1)の発展により、誰でも簡単に鉄道車両の走行性能を精度良く評価できるようになりました。このような車両運動解析を効果的に活用するためには、車輪/レール間に現実的な摩擦特性(接線力係数とすべり率の関係)を適用することが重要で、従来の乾燥時の摩擦特性に加えて,雨天走行時の摩擦特性を把握することが必要です。しかし、雨天走行時の車輪/レール間の摩擦特性は簡単に入手することが困難なもので、どのように現実的な摩擦特性を入手するかが課題となっていました。

2.雨天走行時を模擬した車輪/レール接線力モデル

雨天走行時を模擬した車輪/レール接線力モデルは、2つの理論式の組合せで構成されており、理論式の摩擦係数を入力する項目に対して一般の書籍でも掲載されている「粘着係数と速度の関係式」を適用する点に特徴があります。 本接線力モデルの妥当性を検証するため、二円筒試験装置(図2)を用いた接線力測定実験を実施しました。その結果、荷重条件、速度条件によらず、本接線力モデルによる推定式は計測値を良好な精度で推定できることが分かりました(図3)。さらに、本接線力モデルは、他の研究者が行った実験結果に適用しても良好な精度で推定できることが分かり、一般性を有することが確認できました。

これらの評価結果から、計算実行者が所望する「粘着係数と速度の関係式」を選定するとともに、これを適用した接線力モデルを用いて車両運動解析を実行することで、鉄道車両の走行安定性や走行安全性を現実的な条件で評価できるだけでなく、鉄道車両が加速・減速するときの走行性能も定量的に評価できることが分かりました。特に、本接線力モデルは、一般の技術者や研究者がこれまで開発してきた車両運動解析コードを大規模に改修することなく適用することができる点に有用性があります。

3.参考文献

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