先取喚呼による速度超過防止法

1.速度超過の原因

列車が制限速度を超えて運転することは、鉄道の安全を脅かすものであり、その防止は重要です。速度超過の原因の1つには、運転士による臨時の徐行区間の失念があります。これは、徐行区間があることを、運転士が一時的に失念し、通常の速度で走行してしまうことを指します。

2.失念防止法としての先取喚呼

速度超過を防止するためには、運転士の徐行区間の失念防止が重要です。そこで、その失念防止法として、2種類の先取喚呼を提案しました。

(1)イメージング型先取喚呼

イメージング型先取喚呼は、列車を運転する前、制限速度を守って徐行区間を運転しているところを頭の中でイメージし、その内容について喚呼するというものです(図1)。いつ、どこで、何をするのかを頭の中でイメージし、記憶を強化することで失念を防ぎます。列車操縦中に行うと運転操作を妨害してしまうので、運転区所にいる時など、列車を操縦していない時に行います。

(2)反復型先取喚呼

反復型先取喚呼は、列車を運転中、ノッチ操作や信号喚呼など制限速度以外に注意が向いた時に「徐行注意、時速○○キロ」などと喚呼し、徐行区間のことを意識し続けることで、失念を防ぐ方法です(図2)。運転作業を妨害しない程度に、喚呼をすることが重要です。

3.先取喚呼の効果検証実験

速度超過が生じやすい状況を列車運転シミュレータで再現し、現役の運転士を対象に、先取喚呼による速度超過の防止効果を検証しました。検証の結果、2種類の先取喚呼を行った場合の方が、行わなかった場合に比べて、速度超過の回数が少なくなり、先取喚呼による速度超過の防止効果が確認されました(図3)。

参考文献

  1. 佐藤文紀、小野間統子、増田貴之:先取喚呼を利用した速度超過防止法、鉄道総研報告、第34巻、第1号、pp.15-20、2020.01