利用者の視点に立った運転再開見込み情報の案内実践支援教材

事故などで運転見合わせが生じたときの案内放送について検討を行っています。たとえば、このような理由で運転見合わせが生じたときに、利用者からの案内改善要望が最も高い運転再開見込み情報を早期に発信できれば、利用者の不満を低減できます。しかし、情報の不正確さや変更が気になると、情報を発信する社員には案内しにくいものです。そのため、情報の早期案内が利用者の不満の低減に有効であることを社員が理解し、納得できなければ、案内されにくくなります。

そこで、情報発信者の価値判断が個人の主観や経験に過度に偏らないように、利用者調査から得たデータを用いた説明を行い(図1)、早期案内の有効性について、理解と納得を促進させる手法を提案し(図2)、それを実装した視聴覚教材を開発しました。提案した手法は、単に知識を追加するだけでなく、知識のつながりを組み換え、異常時の案内に対する考え方や規範意識を変化させることで、深い理解と納得を促進させます。そのため、1回の視聴でも案内に関する意識や実践を改善させる効果が持続します。

複数の鉄道会社でこの教材を試用いただいたところ、運転再開見込み情報の案内に関する意識と案内実践を改善する効果が高く、1年後も効果が持続することを確認しました(図3)。今回提案した手法は、上記の例以外にも、社員の理解や納得を促進するための教育に広く活用することができます。

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参考文献

  1. 菊地史倫、山内香奈:輸送障害時における東海・関西地方の旅客向け情報提供に関する調査、鉄道総研報告、第29巻、第7号、pp.51-54、2015.07
  2. Kana YAMAUCHI:”Evaluation and Promotion of Railways Employee Awareness about Observing Rules on Making Passenger Announcements”、Quarterly Report of RTRI、Vol.53、No.4、pp.241-247、2012.11
  3. 山内香奈、斎藤綾乃、藤浪浩平、赤塚肇、村越暁子:見込情報案内におけるルール遵守意識の促進手法とその検証、鉄道総研報告、第26巻、第1号、pp.27-32、2012.01
  4. 山内香奈、村越暁子、藤浪浩平:運転再開見込みを伝える、RRR、Vol.67、No.2、pp.22-25、2010.02
  5. 山内香奈、村越暁子、藤浪浩平:輸送障害時の旅客向け駅案内放送の改善に向けた検討、鉄道総研報告、第23巻、第9号、pp.53-58、2009.09