運転士の覚醒レベル低下防止支援システム

鉄道運転士の覚醒レベル低下を防止することは、鉄道事業者にとって安全・安定輸送のために重要な課題となっています。自動車ではすでに覚醒レベル推定法が実用化されていますが、鉄道の場合は、運転士の動作が多岐にわたり、精度の確保が難しいという課題があります。これに対し本研究では、運転中の運転士の顔画像情報のみから覚醒レベルを推定し、覚醒レベルが低下した場合に警報音によって運転士を覚醒させるシステムを開発しました(図1左)。

本システムは、センサーを身体に接触させることなく、列車に固定したカメラから顔画像を捉え、深層学習によって覚醒レベルを6段階で推定します。一般被験者112名を対象とした実験で、マスクを着用していても 80%以上の推定精度となることを確認しました(図1右)。

覚醒レベルの低下が検知された際に提示する警報音として、機能性(覚醒効果がある)、知覚性(聞き取りやすい)、識別性(他の音と取り違えない)の評価が高い音を開発しました。実験室実験で被験者の覚醒レベルが低下した時に、この警報音を発したところ、単純反応課題の反応時間が回復し(図2)、アンケートでは約9割の人が「目が覚めた」と回答しました。

図1 覚醒レベル低下防止支援システムの構成

図2 実験室実験による警報音の覚醒効果

図3 現車試験による警報音の覚醒効果