特殊信号発光機の明滅検知手法

1.概要

踏切での異常を運転士に知らせる特殊信号発光機の明滅を、運転台に設置したカメラから自動で認識し、運転士へ知らせる手法を開発しました。カメラ映像に対して、点灯と滅灯に分けた二値画像を生成し、複数フレームで重ね合わせることで、時系列情報を画像の色とみなして、点滅を検知することができます。性能評価試験により、特殊信号発光機以外の赤色発光には反応せず、さらに、600m遠方からの検知が可能であることを確認しました(図1)。これにより、安全な列車運行と運転士の負担軽減が期待できます。

なお、特殊信号発光機には図2のように、筒状で点滅する点滅形と、正五角形に並んだ五つの赤色灯が2灯ずつ反時計回りに点滅する回転形の2種類が存在しますが、本研究では点滅形の特殊信号発光機を認識対象としました。

2.明滅検知手法

本手法の明滅検知方法は図3の通りです。まず、カメラから得られた映像に対して、各領域で点灯と滅灯に分けた二値画像を生成します。この二値画像を複数フレームで重ね合わせると、画像内の各画素で時系列の情報を持たせることができます。この時系列の情報を画像の色とみなして1枚の画像に変換すると、時系列情報である点滅を色として持つ画像を生成できます。最後に、変換後の画像に特殊信号発光機の点滅パターンと一致する領域があるかを探すことで、点滅を検知することができます。

3.性能評価

鉄道総研所内試験線にて性能評価試験を実施しました。画像処理にはデスクトップパソコンを使用しました。通知装置はLEDと音によって運転士へ特殊信号発光機の点滅を通知するようになっており、LEDの表示や通知音は自由に変更可能な設計となっています(図4)。
1/3サイズの小型特殊信号発光機を用いて評価した結果、走行条件下の600m相当までの距離 で、車体の揺れなどがあっても約90%の精度で点滅を検知できました(図5)。今後は実用化に向けて検知性能の向上をはかるとともに、実際の列車に搭載できるように装置の小型化に取り組んでいきます。

参考文献

  1. 向嶋宏記、長峯望、野村拓也、市川武:列車前方カメラを用いた特殊信号発光機の明滅検知手法、鉄道総研報告、第34巻、No.7、pp.17-22、2020.07
  2. 向嶋宏記、長峯望、野村拓也、市川武:踏切の異常を知らせる信号をカメラで捉える、RRR、Vol.77、No.9、pp.12-15、2020.09