画像式踏切内異常検知装置

1.概要

平成30年度に発生した踏切事故の内訳によると、衝撃物別では自動車以外の対象が総件数の6割以上を占めています(※1)。踏切における死傷事故の低減のためには、列車接近時に踏切道に侵入した自動車未満の大きさの物体(特に人物の検知)を対象とした踏切内異常検知装置が必要です。そこで、カメラと画像処理による異常検知装置の開発を進めています。これにより、既存の踏切障検ではできなかった転倒した人物の検知も可能となります。

※1 鉄軌道輸送の安全に関わる情報(平成30年度)  国土交通省鉄道局 令和元年9月

2.装置のシステム

本装置は、遠赤外線カメラおよび処理部により構成されます。遠赤外線カメラによって取得された踏切道の温度画像は処理部へ入力され、後述する画像処理アルゴリズムによって検知処理を行います。検知処理の結果は、特殊信号発光機の制御に使用するため、リレー接点にて外部出力します。遠赤外線カメラを用いることで、外部照明を省略するとともに影による影響を最小化します。また、人物は温度分布として映像化され、映像のみからの個人の特定などは不可能であり、既存のカメラ映像による検知方式と比較してプライバシー保護の観点から有利です。外部への敷設機器は、カメラと支持柱およびLANケーブルであるため、線間工事などの大規模工事を必要としません(図1)。

3.処理アルゴリズム

画像処理アルゴリズムは、背景差分法による物体検知処理を行っており、前景(差分領域)があらかじめ設定した検知エリアに残った場合に検知とみなします。その処理フローは「初期化」、「フレームごとの処理」、「後処理」で構成されます(図2)。

「初期化」では、検知エリアの中心にいる人物が突然消えることはないという前提に基づき、検知機能を設定しました。また、「後処理」では、人物等が踏切に長時間停滞した場合は背景を更新せずに1フレーム前の背景を継続しています。これらにより、物体の背景への溶け込みを軽減できます。

4.検証試験

装置全体および踏切内異常検知アルゴリズムの検知性能を評価するため、鉄道総研内の実踏切において評価試験を実施しました。晴天時の画像処理結果を図3、図4に、雨天時の画像処理結果を図5、図6に示します。試験中での未検知(踏切道に人物が存在するが検知できない)および誤検知(踏切道に人物は存在しないのに物体を検知した)の発生はわずかであることを確認しました。これらの結果を踏まえ、現在は実用化に向けたハードウェアの仕様策定や、ハードウェアのフェールセーフ性の検討を進めています。

参考文献

  1. 中曽根隆太、長峯望、向嶋宏記、押味良和:画像処理による踏切用人物検知に関する検討、鉄道総研報告、第33巻、第7号、pp.17-22、2019.07
  2. 長峯望、向嶋宏記、市川武:遠赤外線カメラを用いた踏切内異常検知アルゴリズムの開発、第27回鉄道技術・政策連合シンポジウム、2020.12