徐行予告信号機の認識手法

1.概要

徐行予告信号機には、500m程度先の徐行信号機の存在を運転士に予告するという役割があります(図1)。しかし、視界不良時やヒューマンエラーによる信号機の見落としが起こると、安全性が著しく低下してしまいます。そこで、徐行予告信号機を検知する画像処理アルゴリズムを開発しました。全天候に対応する高速な画像処理により車上からの直接検知が可能となり、運転士の前方監視を支援できます。

2.認識手法

徐行予告信号機の認識には、物体の外周や境界の輪郭を対象とするパターンマッチング手法を適用しました。輝度ではなく輪郭とその法線方向の輝度値の変化率に着目して探索するため、周囲の光に変化がある環境でも安定した検出が行えます。
また、大きさや角度の変化をある程度許容して探索することで、複数の画像を登録することなく、列車の進行や傾きなどによる見かけの変化に対応できるようにしました。
さらに、領域の探索範囲の限定や信号機の大きさの制限などを行い、計算の処理時間を短縮しました。

3.認識試験

プロトタイプ装置を搭載して、本線走行試験を実施しました。認識結果は音声と電光掲示板で運転士にアラーム表示しました(図2)。雨天の夜間という厳しい環境であっても、正しく認識できることを確認しました。また、登録する画像を変更してパターンマッチング手法を適用することで、その他の標識や沿線設備を認識することも可能です。このような検知対処の多様性から、様々な形で列車の安全運転支援に寄与することが期待されます。

参考文献

  1. 長峯望、鵜飼正人:列車前方映像を用いた徐行予告信号機の認識手法、鉄道総研報告、第23巻、第1号、pp.33-38、2009.07
  2. 鵜飼正人、長峯望:列車前方の安全を見張る、RRR、Vol.70、No.11、pp.26-29、2013.11