1. 近地地震のための早期地震警報手法
現行のP波警報は震央距離や震央方位の推定に1秒以上の地震データを利用するため、警報出力まで地震検知後1秒以上の時間を要します。
そのため、近地地震に対する警報の即時性能向上を目的に、地震検知後1秒以下で警報出力できるP波規定値超過手法を開発しました。
提案手法は、S波 /P波の振幅比を事前に準備し、観測されたP波振幅にこの振幅比を乗じることで主要動であるS波振幅をリアルタイムで予測して、警報の要否を判断します(図1)。
一方、S波/P波の振幅比は地点毎に大きく変動します(図2)。
提案手法では、このように観測データから求めた地点毎のS波 /P波振幅比を利用することにより、警報の精度が向上します。
また、観測点によるP波振幅を利用し、かつ簡易な演算処理のみであることから、震源近傍においてより即時性と安定性を高めた早期地震警報を実現します。
提案手法を2016年熊本地震に適用した結果、現行のP波警報と比較して、提案手法が震源近傍において最も早く警報を出力できることを確認しました(図3)。
提案したP波規定値超過の地震警報を鉄道沿線の警報システムへ導入することにより、近地地震に対する鉄道の安全性をより一層高めることができます。