10. 低温性能とメンテナンス性に優れた新幹線車軸軸受油
新幹線電車の車軸軸受用潤滑油として、現在1種類の銘柄の油(現行油)のみが採用されています。
しかし、現行油は低温性能が不足するため、新幹線網の極寒地域への拡大に対応できないという懸念がありました。
また、鉄道総研が過去に開発した、合成油を用いて低温性能を向上させた潤滑油(アクスルーブ)は、経年により赤色化し、摩耗粉の増加と区別できないことがメンテナンス上の課題となっており、採用に至っていませんでした。
これらを解決するため、低温性能とメンテナンス性に優れた新幹線用車軸軸受油(開発油)を開発しました。
開発油は基油として高度精製鉱油、添加剤として赤色化を抑制できる物質を使用しました。
開発油は現行油と比較して流動点が低く、-40℃以下でも流動性を有することを確認しました(図1)。
また、屋外暴露試験により、アクスルーブで生じる赤色化を抑制できることも確認しました(図2)。
実物の車軸軸受を使用し、開発油の 80 万 km 走行相当の台上試験を行い、耐久性を検証しました。
その結果、試験後の油の性状や試験軸受に異常はなく、良好な耐久性を有することを確認しました(図3)。
なお、開発油を構成する基油や添加剤には、他用途の油に広く使用されている汎用品を採用しているため、コストを抑えつつ、原材料の供給安定性も確保しています。
今後、実車両での耐久性を確認後、油浴潤滑を採用する新幹線車両への適用が見込まれます。