9. 台車枠溶接内部のきずを容易に検出できるフェーズドアレイ超音波探傷法
鉄道車両の台車枠は、多数の溶接により組み立てられており、溶接内部のきずを起点として損傷が発生する可能性があります。従来の検査法では、きずの発見に高度な技能を要していました。
そこで、溶接内部のきずを容易に検出できる、フェーズドアレイ超音波探傷法(PAUT法)による台車枠の探傷法とその探傷手順を策定しました。
PAUT法とは、一定の角度で超音波を送受信する従来の探傷法(従来UT法)とは異なり、超音波を様々な角度に首振りさせて送受信することにより、探傷結果を可視化した断面画像として得る方法です(図1)。
画像で判断できるため、きず信号と溶接部の形状によるノイズとの弁別が容易になり、きずの見落としの可能性を低減できます。きずに対して様々な角度から超音波を入射させられるため、従来UT法では検出が難しい30°以上に傾いたきずの検出にも有効です(図2)。
また、台車枠の探傷作業は通常、塗膜をはがしてから行いますが、塗膜をはがさずに探傷した場合でも、塗膜厚さが1mmまでの範囲では検出感度の低下が 20% 以内であることを解析により示しました。
従来UT法では、日本産業規格(JIS)「鋼溶接部の超音波探傷試験方法」に基づく手順での探傷が行われます。
策定したPAUT法による探傷手順では、このJISと同じ基準きずを用いて感度調整する手順をとることにより、従来UT法と同等以上のきず検出感度を持たせました。
これにより、従来UT法での探傷結果との比較・検証ができ、PAUT法に容易に移行することができます。