7. 画像による検知・判断処理の安全用途への適用手法

 カメラや汎用プロセッサを用いた画像処理ユニットでは、それ自身では故障等を診断できないため、故障の際に十分な安全性が確保できず、安全に関わる装置には適用できませんでした。
 画像処理ユニットの故障等の対策として、安全に関わる用途向けとして特別に設計された現行の装置(フェールセーフユニット)で画像処理を行うことも考えられますが、処理速度が遅いため実用的ではありません。
 また、画像処理では機械学習や乱数が利用されるため、画像処理ユニットを複数設けて処理データの完全な一致を確認する従来の診断手法が適用できません。

そこで、フェールセーフユニットと組み合わせて、画像処理ユニットとカメラの故障等を自ら高速に診断する手法を開発しました(図1)。
 本手法では、画像処理ユニットにおける画像処理等の誤りを、処理結果の類似性に着目して診断します。具体的には、画像処理ユニットの処理内容を診断用画像に圧縮し、「診断用画像の差異量=類似性」としてフェールセーフユニットで類似性を判断します。
 また、診断データを画像データに埋め込む機能と、テストパターンを出力する機能をカメラに追加することにより、画像固着等をフェールセーフユニットで診断する手法を提案しました(表1)。

 踏切道内の異常検知装置を対象として、提案手法を実装した検証用装置を試作し、人工故障試験により、その機能を確認し、装置の動作状態を 0.1秒間隔で診断できることを確認しました。

 提案手法は、複数の画像処理ユニットで機械学習等により生じる処理結果(毎周期更新される背景画像など)の差異を許容しつつ、判定に影響する大きな差異を検出できるため、画像以外を扱う AI・汎用プロセッサでの処理にもフェールセーフな構成として適用でき、また、カメラ診断の考え方はLiDARやミリ波レーダなど他の汎用センサーにも用いることができます。

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