軌道保守管理データベースシステム「LABOCS(ラボックス)」

1.LABOCS(ラボックス)とは

「軌道保守管理データベースシステム:LABOCS(ラボックス)」は、軌道変位や車両動揺などの鉄道に関する多様なデータを、いろいろな角度から分析・加工できるソフトウェアです(図1)。鉄道総研が開発し、現在、JR旅客6社と民鉄数社、これらの関連会社等で利用されています。

2015年に、約15年ぶりに新バージョン(Ver.4.0)をリリースし、64bitOSのWindows 7/8上での動作保証を行うとともに、鉄道総研で研究開発用に開発してきたいくつかの特殊コマンドが利用可能になりました。2017年には、Ver.4.1をリリースし、Windows10での動作保証も行うとともに、従来よりも高精度な位置合わせを実現するために開発した「相互相関法」も実装しました。2020年には、Ver.4.2をリリースし、浮きまくらぎの抽出機能や周期的な水準変位の管理機能を実装しました。

また、近年は、LABOCSをベースとした鉄道事業者向けにカスタマイズした保線管理システム等の開発にも積極的に取り組んでいます。

2.LABOCSの主要な機能

LABOCSには機能がたくさんありますので、ここではその一部だけご紹介いたします。

● A/D変換・データのこう正
● 車両動揺データと軌道変位の位置合わせ(図2)
● 相互相関法による高精度位置合わせと軌道変位の急進箇所の抽出(図3)
● 時間軸⇔距離軸データ変換
● 基本演算
 ・各種フィルタ処理
 ・スペクトル処理(周波数分析)・周波数応答解析
 ・P値、σ値等の区間統計量算出
● 軌道保守管理
 ・20m弦、40m弦正矢波形計算(倍長演算)
 ・復元波形の算出
 ・軌道変位補修の移動量計算
 ・乗り心地レベル算出
● 軌道環境データの作成(図4)
● 各種表示・印刷

3.GUIを標準搭載した保線管理システム(LABOCS-MATE)

これまで、LABOCS導入会社においては多くの場合、各社で保線管理システムを構築して活用頂いておりました。そのため、LABOCSの初期導入コストが高価になってしまうという課題がありました。そこで、多くの鉄道事業者の保線管理にご活用頂けるよう、軌道変位や列車動揺の測定データ処理・分析といった、保線管理で一般的に使用される機能をGUIも含めてパッケージ化した低コストな保線管理システム「LABOCS-MATE」を開発しました。

図5は、LABOCS-MATEのメイン画面です。このメイン画面から、マウス操作のみで、図6のようなチャート表示や、管理値超過箇所の一覧表出力等を容易に行えます。

LABOCS-MATEの導入により,軌道の保守が必要な箇所の効率的な把握と,それに基づく確実な保守を計画することができ,鉄道の走行安全性や乗心地の向上が図れます.その他,詳細につきましては,下記関連ページ「LABOCSポータルサイト」にてご確認頂けます.

関連ページ

参考文献

  1. 吉田尚史,田中博文,西本正人:軌道保守管理データベースシステム「LABOCS」Ver.4.2リリースのお知らせ,施設研究ニュース,No.362,pp.3-4,2020.10
  2. 吉田尚史,田中博文,西本正人:公民鉄向けの保線管理システム「LABOCS-MATE」の開発,施設研究ニュース,No.359,pp.3-4,2020.7
  3. 吉田尚史,田中博文,西本正人:軌道保守管理データベースシステム(LABOCS)Ver.4.2のリリースと新機能,新線路,Vol.74,No.10,pp.23~25,2020.10
  4. 田中博文:軌道保守管理データベースシステム「LABOCS」のポータルサイト開発と今後のメンテナンス体制のお知らせ,施設研究ニュース,No.337,pp.5-6,2018.9
  5. 田中博文、山本修平、大島崇史、三和雅史:高頻度検測データに対応した軌道変位の局所的な急進箇所抽出・予測法、鉄道総研報告、Vol.31、No.12、pp.41-46、2017.12
  6. 田中博文:軌道保守管理データベースシステムLABOCS(ラボックス)の機能紹介と新バージョンのリリース,新線路,Vol.69,No.7,pp.24-26,2015.7