摩擦材料の微視的構造を考慮した使用時の内部状態推定

1.はじめに

パンタグラフすり板や制輪子などの摩擦材料に使われる材料の多くは複数の材料からなる複合材料であり、構成相の微視的な構造が内部の温度・応力の分布や全体の物性に影響します。複合材料の微視的な構造をモデル化し、実測が困難である摩擦材料の使用時の内部状態や物性を把握できれば、摩擦・摩耗の現象解明や、よりよい物性をもつ構造の提案に役立てられる可能性があります。

2.評価手法・結果

パンタグラフすり板材料の一つである、銅含浸カーボン材料を対象に図1の手順でモデル化と物性評価を行いました。まず試料をX線CT撮像し、その画像をもとに銅とカーボンからなる数100μmの大きさのFEMモデルを作成しました。均質化法により弾性率や熱伝導率を算出したところ、構成材料の割合のみを用いる従来の複合則に比べて実測値により近い値となりました(図2)。さらに、モデルを用いて内部の温度や電流の分布を把握しました(図3)。

3.今後

本手法を他の鉄道用摩擦材料へも適用範囲を拡大させるほか、摩擦・摩耗の現象を解明するために活用していく予定です。

関連ページ

参考文献

  1. 森本文子、久保田喜雄:微視的構造モデルによるパンタグラフすり板材の物性評価、鉄道総研報告、第35巻、第11号、pp.35-40、2021.11