7. 融雪期の斜面安定度判断システム

 融雪期の斜面安定度を判断する手法として、これまでに融雪量を指標とする手法を開発してきました。
 従来は、当該地域が経験した融雪量の最大値を、斜面安定度が低下したと判断するしきい値としてきましたが、過去の同種の斜面崩壊事例において斜面安定度が低下したかどうか判断できないケースがありました。
 そこで、融雪量に積雪深を加えた2指標で斜面安定度を判断する手法を提案しました。

 本手法は、対象地点近傍のアメダスの気象データと公開地理情報とから融雪量および積雪深を推定し、斜面安定度を判断します。過去の気象データを用いて、積雪深毎に融雪量の再現期待値を求め、これをしきい値として設定します。それぞれのしきい値と、1時間毎に更新される気象データから求めた融雪量および積雪深とを比較することで、斜面安定度を判断します(図1)。
 過去の斜面災害事例をもとに、従来手法と提案手法とで斜面安定度の低下を判断できた事例割合(災害捕捉率)を比較しました。その結果、1冬期あたりに融雪量がしきい値を超過する時間が同じであっても、提案手法は従来手法に対して災害捕捉率が約20%向上することを確認しました(図2)。

 提案手法は公開情報のみを用いるため、新たな観測網を整備することなく任意の対象地点における斜面安定度の判断が可能です。
 さらに、インターネットに接続できる環境であれば場所を選ばずに、図1に示すような斜面安定度の判断結果を閲覧できるシステムを構築できます。

その他の関連コンテンツ