9. 触車事故防止のためのVR体験型教育手法

 「大丈夫だろう」と考えルールを守らない意図的なルール違反に対しては、「ルールを守らない場合のリスク」を教育する必要がありますが、リスクのどの内容を教育すれば特に効果的かは、明らかではありませんでした。
 そこで、保線・電気系統の事例分析および現場社員を対象とする意識調査を行ったところ、ルール遵守を促すためには、特に「事故の発生プロセス」についての教育が必要なことがわかりました。

 そこで、触車事故の発生プロセスを学ぶ「VR体験型教育手法」を開発しました(図1)。
 この教育手法は「VR体験」と「事例置換え課題」の2課題を行うものです。「VR体験」はロールプレイ課題であり、体験者は作業責任者の役割となり、VRの模擬空間内を歩き回り保守作業を行います。例えば、作業に没頭していると列車接近に気が付きにくいという触車事故の発生プロセスを体験することで、適切なタイミングで待避する必要性を理解することができます(図2)。
 さらに「事例置換え課題」では、過去の事例をもとにグループ・ディスカッションで、触車事故の発生プロセスを自分達の職場に置き換え、具体的対策の検討を行うことができます。

 この「触車事故防止のためのVR体験型教育手法」を現場社員に試行したところ、触車事故の発生プロセスの理解が促進し、実施前に比べて、早期待避を完全に遵守する人が21ポイント増加しました(図3)。
 特にVR体験は受講者の満足度も高く、「リアリティがある」との回答が96%でした。

 本手法を実施することにより、触車事故防止のためのルール遵守促進が期待できます。

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