9. 崩壊土砂を再利用した盛土の復旧技術

 近年、豪雨などで盛土が被災する事例が数多く発生しています。盛土が豪雨で崩壊した場合、崩壊後の土砂は多量の水を含んでいるため、再度締固めることが困難です。
 また、経年の既設盛土は現行の規定を満足しない材料の場合が多いため、復旧にあたっては購入土を使用しており、工期やコストの面で課題がありました。
 これらの課題に対し、豪雨などで崩壊した土砂に石灰を添加し、締固めて再利用する盛土の復旧法を提案しました。

 本手法は、①石灰の脱水効果と②締固めによる土の強度増加を活用しています。
 ①について、石灰には脱水効果のみを期待するため配合強度試験は不要であり、石灰の必要添加率は、石灰添加後の土砂の含水比を石灰と水の化学反応式から得られる理論式に代入して簡便に算定することができます(図1(a))。
 また、②について、石灰で脱水した後は締固め度と強度の関係式を用いて、締固め度が必要強度から得られる目標締固め度となるように施工を行います(図1(b))。
 本式は締固め度向上による土の強度増加を反映しているため、崩壊土砂が現行の規定を満足しない材料の場合でも締固め度を向上させることで再利用が可能となります。

 本手法により豪雨および地震後の盛土の復旧に要する工期・コストを従来法よりも約10 〜 20%低減できます。なお、盛土が地震で崩壊した場合については、図1(b) に示す締固め度と強度の関係式のみを用いることで、崩壊土砂を再利用することができます。