16. 列車巡視支援のための線路周辺画像解析エンジン

 線路の保守状態や沿線環境の変化などを総合的に把握するため、徒歩または列車上からの巡視が行われていますが、安全性を確保しながら人的負担を軽減するシステムの導入が求められています。
 そこで、列車巡視の支援を目的として、列車走行に支障する恐れのある物体や沿線環境変化箇所を自動で検出可能な線路周辺画像解析エンジンを開発しました。

 本解析エンジンでは、列車の前頭に設置したステレオカメラで撮影した画像から構築した3次元空間データ上に、建築限界などの任意の空間領域を設定し、その内側に存在する物体の有無を判定します。その際、画像上のレールから線形を推定することで、曲線線形に対応した空間領域の設定が可能です(図1)。
 また、同一の区間で異なる2つの時期に撮影した画像を自動的に対応づけ、両画像間の相違箇所を検出する差分検知技術により、沿線に存在する物体などの出現・消失や位置・形状の変化を検出できます(図2)。

 本解析エンジンを活用して要注意箇所を自動抽出することにより、係員が添乗して行う列車巡視業務において、担当者の熟練度によらない判定や、見落としの低減が可能になるとともに、列車巡視の頻度を減らすことができます。本解析エンジンの一部(建築限界支障判定)はJR九州の列車巡視支援システムに導入され、2020年4月から運用されています。