11. ビデオカメラによる鉄道橋振動の多点同期測定システム

 客観的な数値データで構造物の力学的な特性を評価することができる振動測定による構造物検査を効率化・高度化するために、高速撮影できる4Kビデオカメラを用いた多点同期振動測定システム(図1)を開発し、鉄道橋の検査に適用しました。列車の走行で生じた鉄道橋の変位をビデオ撮影画像の変化量と撮影対象の実寸と画像のサイズ比から算出します。
 この手法により、測定対象にターゲットなどを設置することなく、ビデオ撮影するだけで、撮影画像に含まれる任意の複数点の振動を同期して測定することができます。

 風などで撮影中にカメラが揺れると誤差が生じますが、提案手法では、列車通過時にも動かない橋台などの不動点を画像中から自動的に見つけて、不動点と測定対象点の相対的な振動を求めることでカメラ振動による誤差を補正します。
 また、付属の距離計による簡単な測量結果により、画像中の任意の位置のズレ量と実寸の関係を求めることで、振動変位を実振幅で求めることができます。

 河岸などから列車通過時の鉄道橋をビデオ撮影することで、鉄道橋の動的たわみ量と振動形状を測定できるので(図2)、その変化量から橋のたわみ角や曲げモーメントも推定できます。
 また、複数の電車線柱などを一度に効率的に測定することもできます。
 さらに、支承部の水平・鉛直・回転変位を目視では困難な0.1mm 以下、0.1度以下の精度で測定でき(図3)、定期的に測定を行えば、損傷や可動部の固着などの支承変状を早期に発見できます。
 このように、本システムにより構造物検査の高度化と省力化を実現できます。