17. 公開データに基づくがいし汚損度推定法

 がいしの表面に塩分などが付着して汚損すると絶縁性能が低下するため、汚損度に応じた設備設計や清掃が行われます。従来は海岸からの距離などを基に一律で汚損区分を設けていますが、これを細分化できれば安全性の向上や保全の省力化が期待されます。
 このためにはがいしの汚損度を多数の地点で継続的に把握する必要がありますが、これを実測で行うには多くの労力が必要です。

 そこで、風速・風向・雨量という気象データおよび海岸からの距離などの地形データを用いて、明かり区間の任意の地点、時刻におけるがいし汚損度を推定する手法を開発しました(図1)。
 図2に、鉄道総研勝木塩害実験所(新潟県村上市)におけるがいし汚損度を1年間にわたって推定した結果と実測値を示します。
 また、設備の耐汚損設計に用いられる発生頻度5%におけるがいし汚損度について、本手法による3年分の推定値と、同一期間の実測値から各々求めた結果、両者は概ね一致しました(図3)。
 これらの結果から本手法が実用的な推定精度を有することを確認しました。

 本手法により、汚損度が高い地点はがいしの大きさや連結数を増やして絶縁を強化する、逆に汚損度が低い地点はがいし清掃周期を延伸するなど、環境に応じた耐汚損設計や保全方法の策定が可能です。