12. のり面工背面地盤の低コストな劣化度評価手法

 のり面工背面の地盤の劣化が進行しているのり面は崩壊が生じる危険性があるため、背面地盤の劣化度に応じたのり面工の維持管理が必要です。
 そこで背面地盤の劣化度を評価する低コストで扱い易い水平貫入試験法と、ノモグラムを用いたのり面の安定性評価法を開発しました。

 水平貫入試験では、のり面工に既設の水抜き孔から背面地盤に対して水平方向にロッドを貫入させて水平抵抗値を求めます(図1)。これを新たに提案した換算式により、鉄道で普及している鉛直貫入試験(簡易動的コーン貫入試験)の鉛直抵抗値に換算し(図2)、地盤が劣化して土砂化した部分の厚さなどを判断します(図3)。試験はのり面工を撤去することなく1箇所あたり10分程度で実施可能であり、従来のボーリング調査と比較すると1/20程度のコストで、かつ1/30程度の時間で背面地盤を調査できます。
 また、新たに作成したノモグラムを利用することで、試験結果からのり面工の安定性を判定することができます(図4)。

 これらの成果や、目視検査に活用する健全度判定例、対策工法の要点などを取りまとめ、吹き付けのり面工の維持管理マニュアルを作成しました。
 このマニュアルには、貫入試験に適さない岩斜面を対象とした調査手法として開発した簡易弾性波探査手法についても記載しており、総合的な維持管理マニュアルとして利用できます。