1. 複数海底地震計情報を活用した巨大地震検知手法

 海域で巨大地震が発生した時に、陸上の広い範囲に対してより早く警報を出力することを目的として、複数の海底地震計で観測される加速度値を活用した巨大地震の検知手法を開発しました(図1)。
 従来は、警報の早期性や安定性を考慮し、単独の海底地震計の規定値超過により、海底地震計近傍の陸域に警報を出力する手法が用いられていました。今回提案した手法では、事前に海域で巨大地震(例えば、M7.5以上)が発生したと仮定し、仮想の震源近傍の各海底地震計での地震動を計算して、その値を巨大地震検知用の新たな規定値とします。実際に地震が発生した際には、複数の地震計の観測値が規定値を超過した時点で、巨大地震である可能性が高いと判断し、陸上の広い範囲に早期に警報を出力します。提案手法は複数の海底地震計の規定値超過で判定するため、巨大地震の発生を見逃さないだけでなく、中小の地震に対する必要以上の検知を防ぐことができる、信頼性の高い手法です。
 また、事前に定めた規定値と観測値との比較のみで判定を行うため、計算負荷が小さく早期地震警報システムへの導入も容易です。

 なお、規定値の設定においては、海底地震計のデータを用いた距離減衰式(震源距離と揺れの大きさの関係)と海底地震計位置ごとの海底地盤特性を推定しました。従来から提案されている陸上の地震計データを用いた距離減衰式に加え、これらの推定結果を利用することで、海域で発生した地震に対してより信頼性の高い規定値を地震計ごとに個別に設定することができます(図2)。

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