3. 局所的な強風による車両転覆に対する走行安全性評価手法
高層ビル周辺では、局所的に強い風が吹く、いわゆるビル風が発生することが知られていますが、その近傍を列車が走行する際の安全性評価手法は確立されていません。
そこで、局所的な強風による車両の転覆に対する走行安全性評価手法を提案しました。
はじめに、隣接した2棟のビルの影響で生じるビル風を対象に、風洞試験(図1)と鉄道総研が開発した数値風洞による数値流体解析(図2)を実施しました。
その結果、2棟のビルの後流で生じる風速分布(風速増加率)を解析によって精度良く再現できることを確認するとともに、その影響の大きさや範囲を明らかにしました(図3)。
つぎに、解析で得られた風速分布から推定した空気力が走行する車両に作用する条件を考慮した車両挙動解析手法を構築しました。
その結果、ビルの風下に生じる遮風域からビル外側の強風域に進入すると輪重が減少することがわかりました(図4)。
本手法を用いたパラメータスタディの結果、急な強風にさらされると輪重が減少しやすくなり、特に、走行速度が高い場合等、車両に作用する空気力の立ち上がり時間が2秒程度よりも短いと、輪重減少率が増大する傾向があることが明らかになりました。
本手法は、高層ビル周辺やトンネル坑口、防風柵の切れ目等、局所的な強風が想定される場所における走行安全性評価や効果的な強風対策(速度規制や防風柵設置)の検討に利用できます。