2. 効率的で精緻な地点依存の設計地震動算定法
鉄道構造物の耐震設計では、強震動予測手法を用いて地点依存の設計地震動を算定することとされています。
この方法では、①震源の特性、②震源から建設地点直下の地震基盤までの伝播特性、③地盤の揺れやすさを表すサイト特性を個別に設定して計算します(図1)。
各特性を考慮して設計地震動を算定するためには1000ケース程度の膨大な計算が必要となり、時間とコストを要します(数ヶ月程度)。
そのため、日本全国での適用を想定した標準的な設計地震動が実務上は用いられることが多く、建設地点で実際に起こりうる地震動とかけ離れた地震動が設計に用いられる場合がありました。
これに対し、これまでに様々な震源特性や伝播特性を想定した強震動を網羅的に計算して作成した地震基盤位置での地震波形のデータベースから、想定する震源に応じた地震基盤波形を1波選択し、これとサイト特性のうち振幅のパラメータを用いて、地点依存の設計地震動を1日程度で算定可能な手法を開発していました。
このたび、振幅のパラメータに加え継続時間のパラメータも考慮した新たな算定手法を提案し、地震観測記録の特性を従来より精緻に再現可能としました(図2)。
マグニチュード7.0の地震が直下で発生することを想定し、ある2地点で算定した地震動による構造物応答(応答スペクトル)を図3に示します。
この結果を用いることで、建設地点で発生しうる地震動を適切に把握したうえで、建設地点に適した鉄道構造物の耐震設計が可能となります。