8. 360km/h走行に対応した光切断式トロリ線摩耗計測システム
電車線の保全においてトロリ線の摩耗管理は重要です。
しゅう動面幅から残存直径に換算する従来の検測手法では偏摩耗箇所等での誤差が大きくなるという課題があったため、2019 年度に光切断法を用いたトロリ線摩耗計測手法を提案しました。
しかし、本手法を高速走行列車に実装するには、計測範囲の拡大および現実的なデータ解析時間を実現する必要がありました。
そこで、複数カメラの撮影タイミングと複数レーザー光源の交互点灯タイミングを協調させる手法を考案し、計測精度を維持しつつ新幹線トロリ線の架設範囲全域を計測可能としました(図1)。
また、撮影された複数のトロリ線プロファイル候補から、摩耗計測に適したプロファイルを選択するアルゴリズム(図2)の開発と、並列計算による残存直径の算出処理高速化により、走行1日分の計測データを24時間以内に解析可能としました。
これらにより、360km/hで走行する車上からトロリ線の摩耗を50mm間隔で計測可能な光切断式トロリ線摩耗計測システムを開発しました。
新幹線車両における計測試験(図3)の結果、偏摩耗箇所を含めた約80箇所における手測定との誤差は昼夜ともに概ね±0.3mm以内であり(図4)、実用上十分な精度が得られることを確認しました。
本計測システムにより、トロリ線摩耗管理の精度が向上し、断線リスク低減が期待できます。