5. 線路下横断工事中の緩み検知による軌道変状推定システム
踏切解消や河川拡幅のため、線路下を横断する道路等のトンネル建設が各地で進められています。
このようなトンネルの建設の際は、本体に先行して角形鋼管を挿入して内部を掘削し、仮設トンネルを構築します。この角型鋼管の挿入時に生じた地盤の緩みが列車荷重の繰り返しにより地表面まで伝わると、掘削に遅れて軌道沈下となって現れます。
このような沈下は、予兆の検知が難しい一方で列車の走行安全性に影響するため、発生した場合は緊急の軌道整備が必要となります。
これに対し本研究では、軌道沈下の兆候である地盤の緩みから軌道沈下量を推定するシステムを開発しました。
本システムは、ハンディタイプの地盤探査装置と、軌道沈下量の計算ソフトで構成されます(図1)。
一般に地盤が緩むと地盤中を伝わる弾性波速度が低下します。そこで、地盤探査装置では、掘削前後の弾性波の到達時間差を計測し、弾性波速度の低下率を求めます。
また、軌道沈下量の計算ソフトでは、地盤の緩みの進行と地盤中を伝播する弾性波速度の低下率との関係を利用し、地盤の緩み程度に応じた軌道沈下量を推定します(図2)。
実鋼管を用いた施工試験と実現場での計測により、本システムは1mm程度の幅をもって安全側に軌道沈下量を推定できることを確認しています(図3)。
本システムにより、軌道沈下の予兆を早期に検知し、掘進長を見直すことで軌道沈下を防止し、安全性を向上できます。
また、軌道整備体制の確保日数を削減することで、コスト削減効果も期待できます。