4. のり面工背面地山の劣化度調査マニュアル
老朽化のり面工の維持管理では、目視できない背面地山の劣化度を簡易かつ低コストに把握し、状態に応じた補修等を行うことが重要です。
そこで、背面地山が地盤や風化岩の場合を対象に、ロッドを地山に打ち込んで強度を推定する「自由打撃簡易貫入試験」(図1)を開発しました。
小型軽量であり、のり面工上の小径の孔を通して背面地盤に対して試験機のロッドをショックレスハンマーで打撃貫入させ、ロッド10cm貫入に要する打撃回数から貫入抵抗値を求め、背面地山の緩みの分布を把握します(図2)。
打撃力を計測することで打撃のバラツキによる試験誤差を補正する機能を導入し、測定精度の向上を図りました。併せて、背面地山が岩盤の場合に適用できる「SE-VP試験」(図3)を開発しました。
この試験法では、のり面工側から電動ドリルで岩盤を掘削し、掘削深あたりの消費電力から掘削抵抗値SE を、削孔内部と地表に設置した加速度計から地山の弾性波速度Vpを計測します。
SEは岩の圧縮強度と、Vpは岩の亀裂状態と強い関係性があり、両試験値の組み合わせにより劣化度を判断します(図4)。
これらの試験は従来のボーリング調査と比べて1/10~1/4程度の低コストで実施できるため、多くの地点での調査が可能となり、のり面工の安全性を向上できます。
さらに目視検査の着眼点や上記の試験手法等を示した、のり面工背面地山の劣化度調査マニュアルを作成し、背面地山の種類等に応じた適切な検査を可能としました。