9. コンクリート構造物の改築におけるあと施工アンカー接合部材の設計法

 駅部での利便性向上等のために、既設の開削トンネルやラーメン高架橋に対し、あと施工アンカー工法を用いて部材を増設する事例が増加しています(図1)。
しかし、部材の接合に関する合理的な設計法は提案されておらず、安全側の配慮として、多量のアンカーを配置する事例が散見されます。
この場合、過密な配筋を有する既設構造物に対しては、アンカーの施工や品質の確保が困難となる場合がありました。

 そこで、接合部材の種類やアンカーの量、削孔位置、接合面の目粗し等の接合状況に応じた設計法を開発しました。
隅角部接合では、アンカーの隅角部からの伸出しによる接合面の開口を回転ばねでモデル化し、アンカー量と削孔位置に応じて接合部材の剛性を算定する方法を提案しました(図2)。
壁接合では、接合面における摩擦や骨材同士の噛み合いの影響を考慮したせん断耐力算定法を提案しました。
開削トンネルを対象とした試計算の結果、隅角部の接合や壁の接合において、あと施工アンカー量を30%程度削減できることがわかりました(図3)。

 これらの設計法は、あと施工アンカーの手引きに反映され、コンクリート構造物の改築で活用できます。
本設計法により、合理的な構造計画や接合部材の選択が可能となり、多様な構造形式や空間の確保に関して、設計の自由度を広げることができます。

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